
デビュー戦ゴールのデコ。今シーズンのチェルシーは彼が鍵を握る
バルセロナからチェルシーに移籍したデコが、8月17日プレミアリーグ開幕戦のポーツマス戦でデビュー。しかも、初ゴールのおまけつき。この試合、私の興味はランパード、バラック、デコの3人のゲームメイカーをスコラーリ新監督がどのように起用するかだった。
その答えは、デコを右サイドハーフで起用。しかし、デコを自由に動かせ、空いた右サイドのスペースに、デコの古巣ポルトから移籍した右サイドバックのボシングワが上がる。ポーツマスは、本来マークするべきデコがいなくなってしまい、ボシングワをどうするか、という迷いが生じてしまった。したがって、左からサイドチェンジして右から攻めるというパターンが出来た。この結果、チェルシーはパスを出せる選手が3人もいるという贅沢で、ボールの占有率は7割近く。
また、デコのパスの精度は、プレミアリーグの中でも群を抜くことがわかった。3点目のPKになったジョー・コールへのパスは、正に針の穴を通す正確さ。しかも、プレイやパスの速さが際立つプレミアリーグで、ほんわりと柔らかいパスも出せるデコが目立った。
私の一番の疑問は、デコがプレミアリーグの速さと激しさにうまく対応できるかだった。しかし、デビュー戦で早くもプレミアリーグ、チェルシーに馴染んでしまったのは、驚きだ。特にバラックが怪我で交代してからは、ランパードと組んで真ん中に陣取り、縦横無尽に動き回り、ボールは彼を中心に回り始めた。そして、試合終了間際のロングシュート。パスを出す体勢、そしてタイミングから軽く足を一振り。私だけでなく、相手GKのジェームスも観客も、まさかシュートを打ってくるとは思わなかっただろう。
実は私はデコのファン。モウリーニョ率いるポルトが、03-04シーズンのチャンピオンズリーグで優勝したときの彼のプレイを見て感嘆した。派手なプレイはしないが、シンプルで攻撃的MFながらしっかり守備もする。ボールの持ち方がちょっと変わっている。相手と対峙したときに、取れるかなと思わせるところにボールを置くのだ。でも相手が取りに来ると、実はボールは自分のコントロールできる範囲にある。サッカーでは、「ボールを相手にさらす」と言ったりする。この微妙なボールの持ち方で、準決勝のデポルティーボ戦で相手DFにペナルティーエリアでタックルを誘い、PKを得て決勝進出のお膳立てをした。
今シーズン、チェルシーではどんなプレイを見せてくれるか、今から楽しみになってきた。
山田一仁