山田一仁 公式フォトブログ - Kaz Photo [ Photographer Kazuhito Yamada ] -

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<FWとしてイングランドで成功できるか、李>

January 30, 2012

Photo:Marc Morris/Kaz Photography

  

 チャンピオンシップ(2部に相当)のサウサンプトンに移籍した日本代表の李忠成が、128日のFAカップ4回戦、ミルウォール対サウサンプトン戦の後半から途中出場してデビューを飾った。サウサンプトンは、130日時点で現在2位。上位2チームがプレミアリーグへ自動昇格し、3位から6位までの4チームが残る1枠を決めるプレイオフを行う。

日本代表選手のFWといえば、2001年プレミアリーグのボルトンに移籍した西沢明訓がいる。しかし、プレミアリーグ、FAカップ共に出場なし。リーグカップに3試合出場して1ゴールのみ。同じくボルトンに移籍した晩年の中田英寿もシーズンを通して活躍したとはいえない。西沢は、2000年モロッコで行われたハッサン2世国王杯の日本対フランス戦で決めたボレーシュートが見事だったので、スペインのエスパニョールへの移籍が決まったといわれている。スペインからイングランドへ活躍の場所を求めたが結果が伴わなかった。

昨年のアジアカップ決勝で見事なボレーシュートを決めた李が、西沢の二の舞にならないためには、シーズン後半で結果を出さなければならない。 

夢のプレミアリーグへ昇格し、来季彼の活躍を見てみたい。

 

山田一仁

<サッカー文化の違い、長友が学ぶべきこと>

January 23, 2012
Photo:Kazuhito Yamada/Kaz Photography   

 
Inter_Genoa_Kaz_D2_0194C.jpgのサムネール画像
119日、コッパ・イタリアのベスト16でインテルがジェノアと対戦し、21で準々決勝に勝ち上がった。この試合にベンチ入りした長友は、後半76分から交代出場。

 本来の左サイドバックではなく、左サイドハーフに入った長友は、中央でドリブル突破を図るが、相手DFに跳ね飛ばされてボールを失う。すると、長友がフリーでも、ボールが回ってこなくなる。これに、「一体どうして、僕にボールをくれないんだ」とつぶやいているように頭をかしげる長友。だが、待てよ。試合は20で残り15分。試合をコントロールし、勝ちを完全なものにするのがこの時間帯の戦い方。左サイドバックでプレイする主将のサネッティは、足元にボールを置くキープしながらのドリブルでセンターラインあたりからゴールラインまで持ち込み、コーナーキックを奪う。これこそが求められているプレイだ。だからこそ、38歳で強豪インテルの主将で活躍している。

 日本では、勝利を確実にするために3点目を取りに行く姿勢が評価されるかもしれない。だが、イタリア、いや他の欧州リーグでも残り15分からは、いかに相手をいなすかなのだ。世界最高のサイドバックになるには、サッカー文化の違いも理解しなくてはいけない。

 

 

山田一仁

スター誕生

April 20, 2010
IMGL2067.jpgイングランド代表でないのが残念なベイル
  

<スター誕生>

 トッテナムは、前節アーセナルをホームで破ったのに引き続き、4月17日首位チェルシーをも圧倒し完勝。2対1という結果以上に内容でチェルシーを凌駕した。

 この結果により、トッテナムはマンチェスター・シティ(以下マンーシティ)を抜いて4位に躍り出た。アーセナルがウィーガンに負けたことにより、優勝争いはチェルシーとマンチェスター・ユナイテッドに絞られた。同様にチャンピオンズリーグ出場権を獲得する4位争いがトッテナムとマンーシティで白熱している。

 チェルシーとの試合で、相手の守備陣を引き裂いたのは、左サイドハーフのベイリー。

昨季からめきめきと力をつけていたのだが、この試合ではチェルシーの右サイドバック、フェレイラ(ポルトガル代表)をスピードとテクニックで翻弄。チャンスメイクと前半終了間近に1ゴール。フェレイラを後半交代させてしまう。代わりに入ったイヴァノビッチもベイリーの餌食になり、その突破力を恐れてタックルに行ったテリーは退場。

 ベイリーはまだ20歳。若干16歳でウェールズのフル代表にデビュー。イングランド代表のカペッロ監督が「ベイルがイングランド人なら」と嘆いているに違いない。

山田一仁

本田圭佑の天国と地獄

April 13, 2010

CSKA_Inter_Kaz_D1_0127.jpgのサムネール画像自分のミスで失点した本田は、自らのFKでゴールを狙うが、惜しくも外れて悔しがる

Photo:Kazuhito Yamada

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/Kaz Photography

  

<天国と地獄>
 4月6日、本田圭佑のCSKAモスクワはチャンピオンズリーグ(以下CL)準々決勝、インテルとの第2戦に0対1で破れ、2試合合計でも0対2となり敗退。本田のアドベンチャーはベスト8で終わった。ベスト16のセビージャとの2試合目では直接FKを決めて8強進出を決める大活躍をしたのだが、インテルとの試合では、1戦目では自分がドリブルしているボールを失い、そこからインテルがカウンターアタックで奪った1点に泣いた。
 2戦目ホームで先取点を奪えばチャンスがあった。しかし、試合開始直後に本田がバックパスしたボールをかっさらわれる。たまらず味方DFがファウルで止めたことによってインテルに与えたFKからシュナイダーに先取点を奪われ、試合展開はインテルの思う壺になってしまった。
 CLの8強ともなれば、どのチームもハイレベル。レベルが高くなればなるほど、一つの小さなミスが、失点に繋がる。CSKAモスクワを初のCL準々決勝進出に導いたヒーローは、インテル戦では2失点に繋がるミスをしてしまった。天国から地獄へ。
 しかし、見方を変えれば本田がキープレイヤーで相手から狙われていたということ。本田を抑え込めば、CSKAの攻撃の芽を摘むことが出来るとインテル、つまりモウリーニョ監督が考えていたと言える。それだけ相手に恐れられる選手に成長したのだ。だが、2つの小さなミスが大舞台では大きな代償になることを彼も身をもって知ったはずだ。

この経験を生かして、次のステップアップに繋げれば良いのだ。
 復活のチャンスはある。夏のW杯南アフリカ大会という大舞台が彼を待っている。

山田一仁

チェルシー、アフリカ勢不在の影響なし

January 18, 2010
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アフリカ勢の不在を感じさせず、チェルシー7ゴールの大勝
  
 1月16日、プレミアリーグ首位のチェルシーはサンダーランドを7対2と粉砕。
 現在、行われているアフリカ選手権の出場国に所属する、ドログバ、カルー、エシアン、ミケルらを欠いているチェルシーが、その影響が格下相手では、問題ない事を証明。
 12月の時点で、チェルシーの監督アンチェロッティは「1月の移籍期間に選手を採るつもりはない。現勢力でアフリカ選手権の期間中を凌ぐ」、「新戦力を採っても、ドログバたちが戻ってきてからが問題になるからだ」と発言。1月の苦しい期間を新戦力でカバーしても、アフリカ勢の選手たちが戻ってきたときの過剰戦力をどうするかは、ちょっとした問題だ。
 不調のどん底にいるリバプールは、オランダ代表のバベルが出場機会が少ない不満をインターネット上で公開。チームが成績不振にも関わらず、戦力をうまく活用出来ていない。
 スターリッジ、ボリニ、カクタ(日系フランス人です。要注目)ら、若手にチャンスを与えるのも監督の役目である事を忘れてはいけない。ACミランの黄金時代を築いたアンチェロッティ監督は、そういったピッチ上では見えない問題点も配慮する目を持っている。

山田一仁

チェルシー、ブレのない安定感

November 27, 2009
  

<チェルシー、ブレのない安定感>
 プレミアリーグ首位のチェルシーは、21日ホームにウォルバーハンプトンを迎えて4対0と完封。全ての大会を含めてホーム12連勝の新記録を達成。イングランド代表のランパードは腿の怪我で約3週間の離脱。さらにこの試合、ドログバ、デコ、バラックのレギュラークラスを欠いても、これら4人の代わりに出場するマルダ、ミケル、カルーも各国代表クラス。 格下相手なら戦力ダウンが感じられない安定感。これが今季優勝争いをアーセナル、マンチェスター・ユナイテッドを相手に勝ち点差5でリードする理由だ。
 これに比べて、開幕から最悪のスタートをしているリバプールは、中盤の守備の要、シャビ・アロンソをレアル・マドリッドに放出した穴が大きく。さらにトーレス、ジェラードの怪我で戦力は半減。13試合で既に5敗。週末の試合でジェラードが復帰したにも関わらず、大型補強で大きく戦力アップしたマンチェスター・シティにホームでの引き分けがやっと。
 先発11人の能力が高くても長いシーズンでは怪我の離脱もある。サッカーは11人でやるスポーツだが、控え選手を含めたチーム全員で戦う必要があることを今季は思い知らされる。

 

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主力の怪我で久々登場のミケル(ナイジェリア代表)

山田一仁

プレミアリーグ開幕

August 24, 2009

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Photo:Chris McGachy

ドログバの2ゴールでアンチェロッティ監督に初勝利をプレゼント

  
<プレミアリーグ開幕>
 8月15、16日ついにプレミアリーグが開幕した。私は、7月末から8月初めにかけてプレシーズンマッチを取材。10日間で欧州を車で5600キロ(北海道から九州まで日本の端から端を1往復半の距離)走破。プレミアリーグ4強と大型補強で話題のマンチェスター・シティを見てきたが、その内容が開幕戦に出ている。シャビ・アロンソを失ったリバプールとロナウド、テベスを失ったマンチェスター・ユナイテッドが戦力ダウン、チャンピオンズリーグ優勝2回の実績を持つアンチェロッティ監督を迎えたチェルシーと、昨季怪我で活躍できなかったエドアルドやロシツキーが復帰したアーセナルが上昇気流に乗るという予測だった。
 開幕戦の結果は、リバプールがトッテナムに破れ、アーセナルは昨季5位のエバートンにアウェーながら1対6という信じられないスコアで勝利。予想の一端が垣間見えた。
 移籍期間は8月末まであるので、今後の戦力補強は可能だが、獲得した選手がチームにフィットするか、プレミアリーグに順応できるかどうかは、やってみないとわからない。
 私の予想がどこまで当たるか、まずは数ヶ月試合結果を楽しみにしよう。

山田一仁

W杯を見据えて移籍

June 29, 2009
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ドリブル突破が期待できるのは、松井大輔だ!

  

 今年の移籍シーズンはカカとクリスティアーノ・ロナウドのレアル・マドリッドへの移籍で幕を開けた。大物が真っ先に移籍したおかげで、移籍の進み具合が早い。来年W杯が控えており、これを考慮してのものと考えることも出来る。その良い例が、松井、大久保。
 2人とも、昨シーズンそれぞれ、サンテティエンヌ、ヴォルフスブルグに移籍したが、出場機会に恵まれなかった。W杯の日本代表メンバーに入るには、所属チームでの活躍が欠かせない。出場機会を得るべく、松井はグルノーブルへ、大久保はヴィッセル・神戸に復帰。 同様に稲本もフランスリーグのレンヌへ移籍。一方、日本代表の司令塔、中村俊輔が選んだ移籍先は、スペインのエスパニョール。天候不順のスコットランド(セルティック)では、家族が生活に馴染めなかったという原因もあったようだ。年間の大半が雲が低く暗い毎日、そして雨も多い。太陽が輝いているのが当たり前の日本や、南米、南欧州出身の人では、暮らしてみないとわからない生活環境の差がある。家族の生活環境も移籍に大きくかかわることを知ると、移籍話の裏にどんな理由が潜んでいるか、考えるのもこの時期の楽しみ方。

山田一仁

移籍にかかわる金と誠意

June 28, 2009

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スペインでどこまでやれるか、自分の能力を全て出し切ってほしい

  

この数ヶ月でPC2台が立て続けに故障。リカバリーしたと思ったら盗難。ついに新規購入。最近やっと仕事が通常レベルに戻ってきましたので、ブログも再開。

<移籍に絡むお金と誠意>
 6月22日中村俊輔のエスパニョールへの移籍が決定した。当初、セルティックから移籍すると思われた横浜マリノスは、入団発表直前で破談に。セルティックの給料の半分という条件を飲んで横浜マリノスに移籍するつもりだった中村側が態度を硬化させたのは、クラブが不況の影響で支払いを渋り、中村入団を前提に各方面と商談を進めていたことらしい。
 同じ頃、マンチェスター・ユナイテッド(以下マンーU)のテベスが、クラブの5年契約のオファーを断った。チェルシーとマンチェスター・シティが移籍先の有力候補。
 マンーUでは選手の最高年収となるオファーを断ったとは、どういうことか?代理人の言葉を借りれば「2年間のローン期間中オファーがなく、今季の出場機会激減から本人はクラブから必要とされていないと感じている」 なるほど、ロナウドのレアル・マドリッド移籍決定後のオファーでは、マンーUがテベスを必要としているという誠意が伝わらない。
 お金のためだけでなく、自分を必要としてくれるクラブで選手はプレイしたいはず。
 俊輔も長年の夢だったスペインリーグで可能性を試す。そのチャレンジに私は期待したい。

山田一仁

アーセナル、強さと娯楽性は両立するか?

November 19, 2008
OE2H0838C.JPG怪我あがりのアデバヨール(左)ではラウルセン(右)との1対1に勝てないことを両者の表情が語っている
  

 アーセナルが、昨季プレミアリーグ王者のマンチェスター・ユナイテッド(以下マンーU)に前節2対1と完勝したので、不調から抜け出したと信じた私が甘かった。

 15日ホームでアストン・ビラに0対2と完敗。これで今季13試合で既に4敗。優勝の望みは消えたに等しいだろう。

 その理由を見つけるのは簡単かも知れない。アデバヨールは怪我あがりで途中出場。エドワルド、ファン・ペルシが怪我のためFWの駒不足。MFのロシツキーも怪我。

 アーセナルは、ボールをきれいにパスしながら相手を崩すスタイル。時にその信じられないクオリティーに見る者は驚愕する。しかし、パスが回らなくなると途端にチームの調子がおかしくなる。 

 王者マンーUに勝ったと思えば、昇格組のハル、ストークに敗れる。今のアーセナルには強さに継続性が無い。

 サッカーではこれを"inconsistency"と言う。強さに継続性があるものが優勝するのだが、そういうチームを"consistency"と表現したりする。

 アーセナルの素晴らしいパスサッカーを見るのは、楽しい。いわゆる娯楽性が高い。それに強さが加わったとき、勝者の資格とエンターテイメントの王者が両立するのだろう。

 だが、サッカーで娯楽性(entertainment)と強さ(strength)を両立させるのは、はなはだ難しい。

 その両方を求めたチェルシーのオーナー、アブラモビッチは強さに飛びぬけたモウリーニョ監督に娯楽性が足らないとして切り捨てた。
 今季、アーセナルがトップ4から堕ちた時、ベンゲル監督はどうなる?

山田一仁

昇格ハル、首位アーセナルを破る

October 3, 2008
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司令塔ファブレガスにボールが渡るとすぐにチェックに来る
  

 9月27日首位アーセナルが、今シーズン昇格したばかりのハルにホームで1対2の完敗。

 若手集団、ヤング・ガンナーズの今シーズンの破壊的攻撃力について書くつもりが、
負けたので、ハルがどうやって首位のアーセナルに立ち向かったかを書くことにした。

 アーセナルは前半から攻撃で圧倒。

 しかし、「いつでも入る」と思われたゴールが「いつかは入る」に、、、。

 後半先制したが、ハルのMF、ジョバンニ(ブラジル代表1回)が素晴らしいロングシュートを決めて同点。
 
 さらに数分後に逆転ゴールを食らう。

 「何回でもネットを揺らす」はずのゴールは「1回だけネットを揺らす」結果となった。

 遥かに格上のアーセナルに、ハルは次のようなアプローチで臨んだ。

1、フィジカル勝負=中盤でテクニックでは劣る欠点をこれで互角勝負に。ファブレガスは  
  相手のこのアプローチに相当手を焼いていた

2、マークする相手を離さない=相手がトラップしたと同時にタックルできる距離を保つ
  何しろトラップした瞬間に当たれるタイミングで詰めてくるので、アーセナルが得意と  
  するダイレクト、2タッチの小気味良いパスが出せない。

3、相手パスのカットを狙う=横パスが多いアーセナルの攻撃を狙い済ますようにカット
  前線のFWがしっかりマークに付かれているので、さらに多くなる横パスを狙うよう監督に  
  指示されていたのだろう

 「勝てる」と自分たちを信じてもぎ取った勝利。強豪相手に自陣に張り付いて守るだけでは勝てない。

 最近、4強相手にこのように挑むチームが増えてきた。
 ウィーガンがプレミアリーグに昇格した時の開幕戦は、前のシーズン優勝したチェルシーが相手だった。
 その時の戦い方も今回のハルのように積極的に前に出る攻めを展開。
 決してゴール前に張り付いていたわけではなかった。

 ハル、現在6位。いつまでこの位置にいられるか楽しみだ。

山田一仁

ロビーニョ、衝撃のデビュー戦ゴール

September 20, 2008
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たった1日チームメートと練習したロビーニョがデビュー戦でFKからゴールを決めた
  
<ロビーニョ、デビュー戦ゴール!>
 移籍期限の9月1日レアル・マドリッドからマンチェスター・シティ(以下マンーシティ)に電撃移籍したロビーニョ。9月13日移籍後初めての試合、チェルシー戦でデビュー・ゴールを決めた。

開始僅か13分。FKからボールは壁を越えて、GKツェフが一歩も動けない完璧ゴール。

W杯予選でブラジルに戻っていたロビーニョをこの日の試合に間に合わせるため、新オーナーのUAEの投資グループは、プライベートジェットまで用意。

 ロビーニョがレアル・マドリッドに不信感を抱き始めたのは、C.ロナウドの獲得交渉に際して交換要員にされたことも理由の一つ。両者が同じプレミアリーグでプレイすることにより世界一のプレイヤーはどちらなのかはっきりするだろう。

私がレンズを通して見た印象では、2人に共通の得意技、シザース・フェイント(ボールを足でまたいで相手を欺く)もロビーニョのほうが柔らかくて滑らか。ゴールはロナウドが多いかも知れないが、チャンスメイクはロビーニョがうまい。

縦への突破するスピードはロナウドに軍配。ロナウドが剛ならロビーニョは柔という感じ。

どちらが世界一かは、マンチェスター・ダービーで明らかになる。年内の対決は11月30日。
今から楽しみだ。

山田一仁

プレミアリーグ革命的事件発生

September 9, 2008
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レアル・マドリッドがマンチェスター・ユナイテッドのC.ロナウド獲得しようとした際に、放出要員にしようとした経過もロビーニョのレアル不信に影響を及ぼしたらしい。ロナウドと同じ土俵のプレミアリーグでどっちが世界一のプレイヤーか勝負できる。
ロビーニョもまたロナウドと同様ボールをまたぐ、シザースフェイントが得意なのだ。
  
 夏の移籍期間の最終日の9月1日(通常は8月31日だが、日曜日だったため1日延期)にプレミアリーグでアッと驚く大事件が起きた。

   タイの元首相タクシンがオーナーのマンチェスター・シティ(以下マン・シティ)は、彼が首相時代に行った不正等で本国からの身柄送還請求が出ていたため、プレミアリーグではオーナーとして不適格との議論がされていた。クラブの身売りまたはオーナー交代かという噂で、選手の移籍どころではない台所事情。 

   ところが、UAEの投資グループがクラブを買収。それだけでも、びっくりしたのに、彼らは「金は出すから残された移籍期間1日で世界のスターを買って来い」と指示した。その結果が、レアル・マドリッドからチェルシーに移籍しようとしていたロビーニョ(ブラジル代表)を契約寸前に横取り。移籍金もイングランド史上最高額の3250万ポンド(約65億円)。しかも、今季4位以内、来季チャンピオンズリーグ(以下CL)出場、翌々シーズンチャンピオンズリーグ優勝を目標に掲げた。これを革命と言わず何と言う。プレミアリーグは大変な時代に突入。

 プレミアリーグの4強、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル、リバプールが、この数年間CL常連で、実力で5位以下を大きく離してした。5位以下のグループは、今季はトッテナム、アストン・ヴィラ、ブラックバーン、ポーツマスとマン・シティあたりで争われると私は予想していた。
 特に選手の大半を入替え、刷新したトッテナムが5位グループの先頭を走ると信じていた。が、この革命的大事件で5位グループの筆頭にマン・シティが食い込んで来ると思われる。
 
 CLに参戦するレアル・マドリッドから同じくCLに参戦するチェルシーに移籍すると信じられていたロビーニョが今季CLではなくUEFAカップに参戦するマン・シティに移籍したからには、余程良い条件の給料を掲示されたに違いない。元々、スペインリーグで優勝したレアル・マドリッドからプレミアリーグ2位のチェルシーに移籍しようとした理由は、監督が元ブラジル代表監督のスコラーリだったことと、金銭的条件が良かったからと言われている。
 
 イングランドでは、給料は一般の人も含めて週給でいくらもらえるかという数え方をする。今回のマン・シティ移籍でロビーニョがもらう給料は、週給で16万ポンド(約3200万円)。
 チェルシーの高給取り、ランパード、テリー、バラックあたりが週給13万ポンド(約2600万円)と言われている。ロビーニョは年収で約16億6千万円。チェルシーの3人組が13億5千万円。

 金のためにチェルシーからマン・シティに鞍替えしたと思われても仕方がないが、実情は、レアル・マドリッドが最終的に示した移籍金額をチェルシーが拒否し、残された時間で再交渉をするつもりが、その値段でマン・シティが急遽参入、獲得意思を示したため、レアルは、マン・シティと交渉成立。チェルシーは自分たちだけが交渉相手と思い油断した節がある。金持ちクラブチェルシーがロビーニョ獲得の入札競争に負けたと言う訳だ。
 
 チームの格を比較すれば、都落ちと思われても仕方がないマン・シティへの移籍は、ロシアの富豪アブラモビッチが僅か5年前に起こした革命を、今度はアラブの金持ちが新しい革命を起こしたことになる。

山田一仁

<デコ、鮮烈デビュー戦ゴール>

August 23, 2008
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デビュー戦ゴールのデコ。今シーズンのチェルシーは彼が鍵を握る
  
 バルセロナからチェルシーに移籍したデコが、8月17日プレミアリーグ開幕戦のポーツマス戦でデビュー。しかも、初ゴールのおまけつき。この試合、私の興味はランパード、バラック、デコの3人のゲームメイカーをスコラーリ新監督がどのように起用するかだった。
 その答えは、デコを右サイドハーフで起用。しかし、デコを自由に動かせ、空いた右サイドのスペースに、デコの古巣ポルトから移籍した右サイドバックのボシングワが上がる。ポーツマスは、本来マークするべきデコがいなくなってしまい、ボシングワをどうするか、という迷いが生じてしまった。したがって、左からサイドチェンジして右から攻めるというパターンが出来た。この結果、チェルシーはパスを出せる選手が3人もいるという贅沢で、ボールの占有率は7割近く。
また、デコのパスの精度は、プレミアリーグの中でも群を抜くことがわかった。3点目のPKになったジョー・コールへのパスは、正に針の穴を通す正確さ。しかも、プレイやパスの速さが際立つプレミアリーグで、ほんわりと柔らかいパスも出せるデコが目立った。
 私の一番の疑問は、デコがプレミアリーグの速さと激しさにうまく対応できるかだった。しかし、デビュー戦で早くもプレミアリーグ、チェルシーに馴染んでしまったのは、驚きだ。特にバラックが怪我で交代してからは、ランパードと組んで真ん中に陣取り、縦横無尽に動き回り、ボールは彼を中心に回り始めた。そして、試合終了間際のロングシュート。パスを出す体勢、そしてタイミングから軽く足を一振り。私だけでなく、相手GKのジェームスも観客も、まさかシュートを打ってくるとは思わなかっただろう。
 実は私はデコのファン。モウリーニョ率いるポルトが、03-04シーズンのチャンピオンズリーグで優勝したときの彼のプレイを見て感嘆した。派手なプレイはしないが、シンプルで攻撃的MFながらしっかり守備もする。ボールの持ち方がちょっと変わっている。相手と対峙したときに、取れるかなと思わせるところにボールを置くのだ。でも相手が取りに来ると、実はボールは自分のコントロールできる範囲にある。サッカーでは、「ボールを相手にさらす」と言ったりする。この微妙なボールの持ち方で、準決勝のデポルティーボ戦で相手DFにペナルティーエリアでタックルを誘い、PKを得て決勝進出のお膳立てをした。
 今シーズン、チェルシーではどんなプレイを見せてくれるか、今から楽しみになってきた。

山田一仁

日本代表、準決勝敗退

July 27, 2007
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深いタックルにうろたえる巻。
これだけ深いタックルを日本選手はしていただろうか?
  

 アジアカップ3連覇を狙っていた日本代表は、準決勝で中東の強豪サウジアラビアと対戦。私の予想は、1点差(1対0か2対1)の勝負。チームとしての総合力は殆んど差がない。どちらが勝ってもおかしくない。だが、サウジアラビアは22日(日)準々決勝を戦い、翌日23日(月)に12時間近くかかってハノイに移動。試合は中2日の25日。一方、日本は移動なしで中3日。この差が微妙に日本有利に働くと私は考えていた。

 先取点を奪ったのはサウジアラビア。しかし、日本はCKから中沢のヘッドですぐに同点。先発はオーストラリア戦と同様だったが、変更点は中沢のポジション。日本のマイボールになった時点で、中沢が通常の中盤の選手の位置まで上がってきたのは驚きだった。

 今までは、敵のFWが2枚の時、DFは2人にもう一人余っている状態、つまり守っている方が「+1」を維持していた。そのスタイルはヨーロッパでも基本的な形。チャンピオンズリーグを戦うトップクラブでも多くが、「+1」を基本としている。

 しかし、中沢が少し上がり目のポジションを取った事によって、「+1」ではなく、2トップに対し、2DFの同数勝負の形が頻繁に現れてきた。サウジアラビアは個人技が高く、カウンターアタックに優れている。その強敵に対して、敢えてリスクのあるスタイルを取ったのはなぜか。

 後半開始直後に取られて失点は、日本のグループリーグから続いていた守備の弱さを露呈してしまった。しかし、2失点しながらも、それぞれの失点後にすぐに追いついた能力は褒めてあげたい。だが、3点目の失点のプロセスがあまりにも情けない。

 今までに世界の強豪と戦い個人技の高い国との対戦にも、あの3点目ほどぼろぼろにされたときがあっただろうか?

 私のサウジアラビア戦で見えてきたものは以下の点だ。

1. 中村憲剛と鈴木啓太の2ボランチは、格下の相手にボールポゼッションを高めるボール回しをするには問題ないが、自分たちと同等か格上の相手に戦うには守備の能力がなさ過ぎる。

2.サウジアラビア戦で、この2人がスライディングタックルをしたのを見たのは、私の記憶で、鈴木啓太が1回。中村憲剛は、1回もしていないはずだ。味方のピンチにタックルでボールを奪えなくて、このポジションの役目が果たせるだろうか?特に中村憲剛は、ボールを持った相手に対するチェックが甘く、UAE 戦などでドリブルの中央突破などを許している。

3. ボランチ役には、相手を跳ね飛ばせることが出来るようなフィジカルの強さとパスも出せる能力のある選手が必要。

4.交代出場で入ってきた選手のうち、羽生はバー直撃のシュートを放つなど、可能性を感じさせたが、佐藤と矢野は全く歯が立たなかった。特に矢野はロビングに対して相手DFとの駆け引きに負け、ヘッディングできるボールに対して、ジャンプも満足に出来ず頭にボールを当てることさえ出来なかった。

5. 9月の欧州遠征(対スイス、オーストリア戦)には松井(ルマン)、稲本(フランクフルト)、中田浩二(バーゼル)、三都主(ザルツブルグ)などが加わった代表が見たい。

 オシム監督が言っている「目標は2010W杯。試合に負けて学ぶことも必要」や、欧州組みをあまり重用せず、国内組を中心に今まで代表選考してきたことは、ジーコ時代と違って国内組のレベルアップを図り、最終段階で欧州組みを融合させた方が、チームの総合力をアップさせるには良い考え方と私は理解していた。

 だが、アジアカップの準決勝という舞台、事実上の決勝と私が見ていたサウジアラビア相手で中沢のポジションを上げるリスクを犯して得るものは一体なんだったのだろう。

 3位決定戦に回った日本。相手は韓国。どんな試合であれ、「日本には絶対に負けてたまるか」という意気込みで勝負してくる韓国。気持ちの上では日本は不利だろう。

 通常なら、サブ組に出場機会を与えるが、オシムはどの選手を使ってくるか。同じ先発布陣なら、ジーコ監督時代と同じようにサブ組は紅白戦要員と取られても仕方ない。

山田一仁

イングランドは本当に強いのか?

June 12, 2007
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2アシストで勝利に貢献したベッカム
  
 ベルギー対ポルトガル戦をお伝えする予定でしたが、ベッカムがイングランド代表に復帰後、初の公式戦となったユーロ2008予選のエストニア対イングランド戦をお伝えします。

 今シーズンの最後の公式戦となったこの試合は6月6日、エストニアの首都タリンで行われた。欧州の中でアンドラ、フェロー諸島、サンマリノ、リヒテンシュタインといった小国はW杯やユーロの予選でサッカー大国に到底勝てる見込みはない。が、ホームの試合では引き分ける可能性があり、それが強国の上位争いに微妙に影響してくる。今回のエストニアもバルト三国では最も人口が少なく140万人。サッカーの母国イングランドにとって勝って当然の試合。
 しかし、予選グループ4位に甘んじ、この試合に勝たないと、予選敗退とマクラレン監督の首が飛ぶ可能性が現実味を帯びるイングランドの各選手は入場の際、かなり神経質だった。 特に主将のテリー、ジェラード、ランパードの主力は、エストニアごとき(ちょっと格下にみて失礼だが、、、)にこんなにナーバスになってどうするの?というくらい表情はこわばっていた。
 前半は、ボール・ポゼッションは高いものの、これといって有効な攻めがない。灯台のようにそびえるクラウチめがけてボールを放り込むだけ。クラウチとオーウェンの2トップが前後左右に動いてスペースを作る動きをしないため、スペースが生まれず中盤の選手が2列目から上がる動きが作れない。
 しかも、ボランチの位置に本職の選手を置いていないので、中盤の中央を担うランパードとジェラードがお互いに守備を意識して思い切って上がれない。ここがイングランドの問題点の一つ。イングランドで最も実力と人気のある選手を並べたのはいいが、バランスが取れていない。ランパードはチェルシーでマケレレやミケルがボランチ役に徹してくれる。ジェラードのリバプールは同様にアロンソやマスチェラーノがその役割を担ってくれる。したがって彼らの攻撃的能力が生きるのだ。

 ジョー・コールのゴールで1対0とリードしたものの、内容自体はとても褒められるものではなかった。相手はベッカムのクロスを警戒して、早いプレッシャーでフリーでクロスをあげさせなかった。そのため攻撃は、単調で左サイドからジョー・コールを越えてサイドバックのブリッジが盛んに駆け上がってクロスを試みるが、決定的チャンスが作れない。
 オーウェンがゴールできるチャンスがあったが、相手をかわそうとしてコースがなくなった。彼の動きにも切れがなく、まだフィットネスが100%戻っていないような気がする。

 後半こそ相手が疲れて、ベッカムへのプレッシャーがなくなり、正確なクロスから2点を追加した。が、これがクロアチア、ロシア、イスラエルを相手に通用するか疑問だ。
 残り5試合中、4試合がホームでの戦い。この数字だけ見るとかなり有利に思える展開だが、ホーム4試合のうち3試合は相手が現在グループの上位にいるクロアチア、ロシア、イスラエル。ここで引き分けが2つくらい続くと予選突破が危くなる。
 私は、クロアチアとロシアとの試合がキーポイントになると思う。特にロシアとはアウェーの試合も10月に控えている。監督は韓国を2002W杯ベスト4 に導き、オーストラリアを2006W杯で史上初のベスト16に進め、グループリーグでは日本を3対1と叩きのめしたあのヒディンクだ。かなりイングランドを苦しめるに違いないと見ている。
 ホームで2試合くらい引き分けてしまうと、クロアチアとロシアに本大会出場権を持って行かれる可能性はありえる。

山田一仁